名古屋のうなぎ文化を語るうえで、外せない一軒があります。
それがイチビキ。
創業70年以上の老舗で、昼どきには必ずといっていいほど行列ができる名店です。
並んででも食べたいと多くの人が口をそろえる、その魅力とは一体なんなのか。
そして、これまで食べた中で一番うまいと語られる、人生最高のひつまぶしとは。
今回は、実際にイチビキを訪れた筆者が、その味わい、香り、感動を余すところなくお伝えします!
名古屋に来たなら、絶対に外せない名店イチビキ。

老舗として名を馳せるイチビキは、うなぎ好きはもちろん、普段あまりうなぎを食べない人にとっても、本物の美味しさを知るきっかけとなる場所。
地元の人はもちろん、旅行者も足を運ぶ名店で、日本の夏の食文化を語るうえでも欠かせない存在であり、この一碗はまさに要チェックです。
開店前から長蛇の列ができるこのお店は、予約不可、そして数量も限定。
そのため、確実に味わうためには早朝からの行動がカギを握ります。
うなぎの焼きの香りがうっすら漂ってくる時間帯には、すでに列ができ始めるほどの人気ぶり。
そんな貴重な場所で、今回ついに念願の本場のひつまぶしを堪能することができました。
前日から想像をたっぷりと背負い、当日の朝は目覚ましを何重にもかけ、気合い十分で出発。
まだ人のまばらな街を歩きながら、胸の奥はワクワクと緊張が入り混じっていました。
いざ到着して列に並んだ瞬間、その静かな高揚感と周囲の期待に満ちた空気に、心が一気に盛り上がりました。
その結果は、まさに期待をはるかに超えるものでした。
うっとりするまでの香ばしさと、炭火の香りが湧き立つ、極上のひつまぶし。
一口食べた瞬間に日常を完全に忘れ、感動とともに時間が止まったかのような静かな幸福感に包まれました。
外観から伝わる老舗の風格

レトロな木造の外壁に、藍色の暖線がゆらゆらとゆれて、旧き良き時代の風情を感じさせてくれます。
木の引き戸や、時間の経過を感じさせる風合いは、まるで映画の一場面のような静けさを感じさせ、一歩踏み入れば時代を違えたような気分にさせてくれます。
手書き風のイチビキの看板は、本物感と老舗のこだわりをごっそりこめたかのような重みを感じました。
通りを行きかう人も思わず足を止めて見てしまう、そんな風格のたたずまいがこの店にはあります。
お昼前にはすでに長輪の列ができており、あのゆったりとした店の雰囲気は、その場にいるだけで幸せな気持ちになれる空気感を感じさせてくれます。
うなぎの香ばしさが、食欲を直撃

ふたを開けた瞬間にふわっと立ちのぼるのは、炭火でじっくりと焼かれたうなぎならではの濃厚な香り。
その瞬間から、思わずごくりと喉が鳴るほどに食欲が刺激されます。
表面は職人技が光るパリッとした焼き加減で、程よい焦げ目がうなぎの旨みをより引き立てています。
一口かじると、香ばしさとともに、内側のふっくらとした身が口いっぱいに広がって、まるで絹のようにほどけていく柔らかさ。
さらに、甘辛いタレが絶妙なバランスで絡み、タレの深みが染みこんだご飯と混ざり合えば、まさに極上という言葉がふさわしい味わいに。
炭火の余韻、タレの香り、ご飯の一粒一粒までが計算されたように調和し、五感すべてが満たされていく感覚。
まさに口福の極みであり、一口ごとにこれだよ、これと頷かずにはいられない至高の時間がそこにはありました。
3通りで味わう至福の食べ方
1【そのまま】
まずは、王道中の王道。
炭火で香ばしく焼かれたうなぎを、なにも加えずにそのまま味わいます。
表面のカリッとした食感と中のふわふわ感、タレとご飯の一体感をまっすぐに感じられる、シンプルだからこそ際立つ美味しさ。
一口ごとに、思わず笑みがこぼれてしまう幸せのひとときです。箸を持つ手が止まらないとはまさにこのこと。

2【薬味のせ】
次に登場するのは、ネギ、わさび、刻みのりをたっぷりのせたアレンジスタイル。
さっぱりとした香味野菜が加わることで、うなぎの濃厚さに爽やかなコントラストが生まれ、一口ごとにまったく違う世界が広がります。
口に入れた瞬間に感じる清涼感と、ツーンとしたわさびの刺激がクセになる。
箸で軽く混ぜて、香りを楽しみながら味わうと、また一段と贅沢な気分に。

3【お出汁かけ】
そして最後の〆は、熱々のお出汁をかけていただく、まさにひつまぶし最大の魅力ともいえる食べ方。
お茶碗に残ったうなぎとご飯の上から丁寧に注がれる出汁は、鰹と昆布の旨味がしっかりと効いた優しい味わい。
ご飯がほどけ、うなぎの脂が溶け出して、口の中にじんわりと染みわたる幸せ。
薬味をさらに追加しても美味しさ倍増で、最後の一滴まで飲み干したくなる満足感があります。
3つの食べ方を順に味わえば、まるで小さなコース料理を食べたかのような充実感に包まれるはず。これぞ、ひつまぶしの真骨頂。

まとめ:また並んででも食べたい
イチビキのひつまぶしは、名古屋に来てよかったと心から思わせてくれる、旅の記憶に深く刻まれるような感動の一杯です。
ひと口ごとに広がる香ばしさとふっくらした食感、そして3通りの楽しみ方があることによって、まるで一食のなかに何度も驚きが詰まっているような充実感を味わえます。
名店の空気感や、並ぶ時間さえも特別な体験として思い出になる、そんな価値がこの一碗にはしっかりと詰まっていました。
ふだんうなぎをあまり食べない人や、名古屋めしにまだ馴染みがない方にも、自信を持っておすすめできる逸品です。
並ぶことを面倒に思うかもしれませんが、その数十分の待ち時間すらも食べ終えた瞬間に報われるそんな力を持つ味です。
次回名古屋を訪れるときも、きっと私はまたこの列に並んでしまうでしょう。
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